蝉時雨
「―――――‥‥」
倒れた拍子に畳の上に崩れた雑誌に
グラスからこぼれた麦茶が滴って、
ブライダル雑誌の表紙にも
うっすらとシミを広げていく。
「‥‥‥びっ‥くりした」
しばらくの沈黙の後、
涼ちゃんがぽつりと声を漏らす。
そして上半身を起こして
菜々子の体ごと体勢を立て直した。
「菜々子、大丈夫か?
ごめん、支えきれなかった」
「‥‥‥‥‥‥っん‥で」
「?菜々‥‥‥」
「‥‥っ!なんでそんなこと言うの!!!」
心配そうな涼ちゃんを拒絶するように
言葉を遮って、叫んだ。
収集のつかない感情に体が震える。
そんな菜々子を涼ちゃんが
驚いた顔で見つめている。