蝉時雨
「‥‥私‥っ!
涼ちゃんの妹じゃないよ‥っ」
堪えきれなくなった涙が頬を伝って、
ぼたぼたと握り締めた拳の上に落ちる。
「ちゃんと、女として見てよ!
‥‥子供扱いしないで‥‥――っ!!」
必死に絞り出したけど、
最後まで言葉にならなかった。
自分の気持ちばかり
優先してしまう菜々子は
やっぱり子供なんだろう。
「‥‥‥うん。そうだよな。ごめんな」
そんな私を包み込むように
涼ちゃんの柔らかな声が響いた。
そして涼ちゃんは私をそっと抱き寄せて
いつもみたいに頭を撫でる。