蝉時雨






「今日も暑いわね。
はい、菜々子はいつものね。
京ちゃんは麦茶でよかったかしら?」

「大丈夫です。ありがとうございます」


縁側に飲み物を持ってきたママとの会話に
京介は愛想よく応じている。



菜々子と話す時とは大違いだ、
とむくれながらも
京介のいきなりの訪問に焦っていた。



楽しそうに話す二人を横目に
冷えたカルピスを飲みながら、
何から切り出そうかと
一人必死に考えを巡らせる。






「じゃあ、京ちゃん。
おばさんは失礼するけど
ゆっくりしていってね」

「はい」

「それじゃあ菜々子、ママ出かけてくるから」



そう言って、
菜々子の考えがまとまらないうちに
最後の砦だったママは
「くれぐれも京ちゃんに迷惑かけないように」と
言い残して、会話を切り上げて
リビングから出ていってしまった。







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