蝉時雨
縁側に残された私たちの間に
沈黙が流れる。
やっぱりどうしたって気まずい。
どうしよう
何から話したらいいんだろう
無言のまま考え込んでいると、
グラスの麦茶を一口飲んで
京介が口を開いた。
「課題やってんの?」
「えっ?ああ、うん」
「珍しい。熱でもあんじゃねーの?」
「失礼なっ!
菜々子だってやるときはやるんです!」
憎まれ口を叩く京介に
いつもの調子で返す。
だけどそんな会話もすぐに途切れてしまい
また二人して黙りこんでしまった。
「‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
手中のグラスから
水滴が垂れる。
熱を帯びた風が
縁側の風鈴を涼しげに鳴らした。