蝉時雨




「だから、謝んなくていいって」


「でも‥‥」


「お前にはさ、
後ろめたいことでしかないんだろうけど
俺にとっては得だったわけだし。」


そう言って目を伏せた京介が
少し切なそうに笑う。

あの日、
『後悔してるんだろ』って
苦しそうに言った京介の顔が蘇る。




違うのに

後悔なんてしてないのに







「京っ‥」


「まあ、
菜々ちゃんの初ちゅーだったわけだし
どさくさに紛れて二回したし」

「?!」


真っ赤になった私を見て
心底楽しそうににやにやと
意地悪な笑みを浮かべる。









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