蝉時雨





「あー、どうせなら
舌でも入れときゃよかったな」

「なっ?!最低!!変態!!!
ばか京介っ!!!!」


私の反応を見ながら、
勝ち誇ったように笑う京介が憎らしい。





「何よ。ちょーっとだけ
いいやつ、って思ってたのに。
損した!!」


むくれながらそう言うと、
京介は目を細めて柔らかく笑った。


その表情はすごく大人びて見えた。










いつまでも子供のままなのは
菜々子だけなのかもしれない。





ぬるくなったカルピスに口をつける。
少し薄まった甘ったるい桃の味が
口の中に広がる。














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