蝉時雨
大人になりたいのか
そうじゃないのか、わからない。
暑さに更に熱を加えるように
一心不乱に鳴く蝉が
庭先の空気を震わせる。
答えのでないことを
何度も何度も考えるうちに
だんだん、うとうとしてきた。
忙しい蝉の声を耳に目を閉じる。
あれだけ必死で鳴いたところで
メスに見つけてもらえなかったら
どうするんだろう。
報われもしないのに
それでも最後まで
ただひたすらに鳴くのかな。
ばかみたい。
それじゃあまるで、
菜々子みたいだ。
そんな私の気持ちを感じたのか
怒ったようにより一層鳴き声が強くなった。
かと思えば、しばらく鳴いた後で
ジジッ、ジッと鈍い音をたてて
鳴き声は聞こえなくなった。