蝉時雨




大人になりたいのか
そうじゃないのか、わからない。







暑さに更に熱を加えるように
一心不乱に鳴く蝉が
庭先の空気を震わせる。




答えのでないことを
何度も何度も考えるうちに
だんだん、うとうとしてきた。





忙しい蝉の声を耳に目を閉じる。







あれだけ必死で鳴いたところで
メスに見つけてもらえなかったら
どうするんだろう。

報われもしないのに
それでも最後まで
ただひたすらに鳴くのかな。






ばかみたい。

それじゃあまるで、
菜々子みたいだ。







そんな私の気持ちを感じたのか
怒ったようにより一層鳴き声が強くなった。



かと思えば、しばらく鳴いた後で
ジジッ、ジッと鈍い音をたてて
鳴き声は聞こえなくなった。








< 220 / 225 >

この作品をシェア

pagetop