蝉時雨
「‥‥あ」
忙しかった庭先を
一斉に静寂が包む。
「止んだ‥‥」
桜の木からは何も聞こえてこない。
しばらくの沈黙を
チリン、となった涼しげな風鈴の音が破った。
“じゃあ、これからじゃん”
ぼんやりとしてきた思考のなかで
ふと京介の言葉を思い出す。
いつか
この想いが消える日がくるんだろうか。
涼ちゃんじゃない誰かを
好きになる日がくるんだろうか。
遠くの方で蝉の鳴く声が聞こえる。
その声を聞きながら、
遠のいていく意識に身を委ねるように
ゆっくりと目を閉じた。
ー蝉時雨 6日目 ENDー