蝉時雨
「もう、やだぁ‥‥」
座りこんだラグマットの上の
クッションに顔を埋める。
つけまつげを気にかけることなく
押し付けた顔。
後で髪だけじゃなくて
メイクもやり直さないと。
それどころか、
こんな調子じゃ一日中こうやって悩んで
涼ちゃんに会いに行かないまま
終わってしまいそうだ。
「‥‥もう頭の中、パンクしそう」
半泣きになりながら
悲鳴のように呟く。
ひとつのことをずっと悩んだり、
深く考えたりするタイプじゃないから
慣れない作業に菜々子の思考回路は
限界を訴えている。
もうやだ。
何とかして。
誰か助けて。