蝉時雨
少し間をおいて涼ちゃんは続ける。
「いきなりすぎるのはわかってる」
さっきまでとは違う
どこか緊張を含んだような雰囲気が
私の不安をさらに煽る。
不安になることなんて何もない。
だって今年は涼ちゃんと
たくさん一緒に過ごせるんだもん。
いっぱい思い出作るんだから。
「でも今回の帰省が
ちょうど良い機会だと思って」
最高の夏休みにするんだから。
そうでしょ?
涼ちゃん。
じゃあそんな言い方変だよ。
おかしいよ。
「いい機会って、何よ?」
典子おばちゃんが急かすように尋ねる。
ねぇ、涼ちゃん。
どうして
そんなにはにかんでるの?
ねぇ
そんな真剣な顔しないでよ。