蝉時雨



事態が飲み込めないままでいる私を残して、
会話は進んでいく。






「結婚の話はどのくらい進んでるの?」

「まだ具体的には全く。
でも、もう向こうの親には挨拶に行って来た」

「そうかそうか!!なら話ははやいな」



盛り上がる3人に囲まれて、
さっきから石像みたいに固まったままの
私を見兼ねて京介が小さく声をかける。






「………おい、大丈夫かよ」

「………」




私は答えられずに、ただひたすら
スカートに当てたタオルとにらめっこ。






大丈夫なわけない。











< 32 / 225 >

この作品をシェア

pagetop