蝉時雨
事態が飲み込めないままでいる私を残して、
会話は進んでいく。
「結婚の話はどのくらい進んでるの?」
「まだ具体的には全く。
でも、もう向こうの親には挨拶に行って来た」
「そうかそうか!!なら話ははやいな」
盛り上がる3人に囲まれて、
さっきから石像みたいに固まったままの
私を見兼ねて京介が小さく声をかける。
「………おい、大丈夫かよ」
「………」
私は答えられずに、ただひたすら
スカートに当てたタオルとにらめっこ。
大丈夫なわけない。