蝉時雨
「‥‥‥‥おい、菜々」
「はいはい?」
とびきりの笑顔で挨拶した私とは正反対に、
京介は朝っぱらから
眉間にしわを寄せて呆れ顔をしている。
まったく‥‥
ママに挨拶する時みたいに私に対しても
少しくらい愛想よくしてくれてもいいのに。
「昨日よりひどい」
「何が?」
「極厚化粧」
「…………」
うだるような外の暑さと同じように、
今日も京介は相変わらずだ。
いつもなら言い返すところを
ぐっと堪えて私はにこやかな笑顔を作った。