蝉時雨


乗り出していた体を座席に戻して
背もたれに深くもたれかかる。


それに気づいたのか
腕を組んで寝ていた京介が目を開いた。






「‥‥何、もう諦めたんだ?」

「ちっがうよ。
ちょっと眠くなっただけ。」

「ふーん」


京介が唇の端を片方だけくいっとあげて
いたずらな笑みを浮かべる。






「………いじわる」

私はそれだけ言い返して
小さくため息を吐いた。



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