蝉時雨
そのまま窓の外を
ぼーっと眺めていたら
なんだか眠くなってきてしまった。
「‥‥‥こ、‥‥々子」
起きてても涼ちゃん圭織と喋ってるし、
京介は寝てるし私も寝ちゃおうかな。
「菜々子?」
うとうとと襲ってくる睡魔に身を任せて
夢の世界へ旅立とうとしていた私を
涼ちゃんの声が引き止めた。
「‥‥‥‥え?あぁ。
なあに、涼ちゃん」
「今日はこの後何か予定ある?」
「ううん。何も」
毎回涼ちゃんといられる時間は
限られてるのに、
予定なんか入れるはずないじゃない。
「お、やった!
じゃあさ、夕飯もうちで食べていけよ」
「ええっ?いいの?」
「当たり前じゃん。
お袋達も喜ぶだろうし、
菜々子の話もまだいろいろ聞きたいし」
「食べてく!!
ママにメールしとくね!!」
「おう!!帰り遅くなっても
ちゃんと送っていくから」
「うん!」
飛び起きて携帯を取りだし、
るんるん気分でメールを打つ。
圭織がいるのは気にくわないけど
少しでも涼ちゃんと
一緒にいられるならそれでいい。
さっきまで落ち込んでた気分も
涼ちゃんのたった一言で一変する。
だって菜々子の世界は
涼ちゃんを中心に回ってるんだから。