蝉時雨
上から京介の不機嫌そうな声が降ってくる。
「ん?何よ」
「何でうちにいんだよ」
京介の方には振り返らず、漫画に目を通す。
そんな答えのわかりきった質問をして
どうするつもりなのだろう。
「そんなの涼ちゃんに会いにきたに
決まってるでしょ」
「じゃあなんで俺の部屋にいるんだよ。
だいたい、お前の方がくつろいでる
意味がわかんねえ」
「いてっ」
立ち上がった京介によって
手元から引き抜かれた枕が、
私の頭めがけて落とされた。
私だって好きでこんなところで
のんきに漫画を読んでいるわけじゃない。
でも、しょうがないじゃない。
「‥‥‥‥‥だって」
涼ちゃんと圭織が私の目の届かないとこで
一緒にいるのが心配で、今日も早起きして
来たっていうのに
それなのに
「肝心の涼ちゃんがいないんだもん!!」