蝉時雨
「‥‥別にそんなことないもん。
対抗なんてしてないし!」
「‥‥ふーん。
とかいって今日は顔薄いじゃん」
にやっと京介の口角が上がる。
京介が意地悪するときの顔。
「そ‥そんなことない!」
「目とか昨日の半分」
「はあ!?失礼な!!
今日は時間がなかったの!!」
「ふ~~~~~ん」
めずらしく眉間に皺を寄せてないと思えば、
人のことからかって
にやにやと意地悪そうに笑っている。
どっちにしたってやっぱり京介には
愛想も、爽やかさのかけらもない。
「何よ、その顔は!
ばか!!ばか京介っ!!」
抱きしめていた枕で京介を叩く。
でも京介は相変わらず
にやにやと意地悪な笑みを浮かべたままだ。
それがまた見透かされているようで
悔しくて、そのまま枕で攻撃を続けていると
「京介ー、ちょっと来てー」
と、一階から典子おばちゃんの声がした。
「京介、おばちゃんが呼んでる」
「あ?めんどくせぇ」
「またそんなこと言って。
ほら、行くよ!」
そうして私に腕を引っ張られ、
めんどくさそうに立ち上がった
京介の背中を押して一階に降りた。