蝉時雨



「‥‥別にそんなことないもん。
対抗なんてしてないし!」

「‥‥ふーん。
とかいって今日は顔薄いじゃん」

にやっと京介の口角が上がる。
京介が意地悪するときの顔。




「そ‥そんなことない!」

「目とか昨日の半分」

「はあ!?失礼な!!
今日は時間がなかったの!!」

「ふ~~~~~ん」

めずらしく眉間に皺を寄せてないと思えば、
人のことからかって
にやにやと意地悪そうに笑っている。
どっちにしたってやっぱり京介には
愛想も、爽やかさのかけらもない。




「何よ、その顔は!
ばか!!ばか京介っ!!」

抱きしめていた枕で京介を叩く。
でも京介は相変わらず
にやにやと意地悪な笑みを浮かべたままだ。


それがまた見透かされているようで
悔しくて、そのまま枕で攻撃を続けていると
「京介ー、ちょっと来てー」
と、一階から典子おばちゃんの声がした。





「京介、おばちゃんが呼んでる」

「あ?めんどくせぇ」

「またそんなこと言って。
ほら、行くよ!」



そうして私に腕を引っ張られ、
めんどくさそうに立ち上がった
京介の背中を押して一階に降りた。



< 75 / 225 >

この作品をシェア

pagetop