蝉時雨


物音のする方へ行くと、典子おばちゃんが
何やら押し入れをごそごそと漁っていた。

足元には中身を確認した後の、
蓋の開いた箱が何個か転がっていた。




「京介、ちょっとあの一番上に積んでる箱
全部おろしてちょうだい」

「はあ?だりぃ」

「ほら!つべこべ言わずやる!」

おばちゃんに促されて
渋々京介が押し入れに向かい、
上の方に積まれた箱を下ろしていく。





「典子おばちゃん、何か捜し物?」

「そうなのよ。
浴衣を探してるんだけど
なかなか見つからなくて」

「浴衣?お祭りあるの?」

私の質問におばちゃんが
作業をしていた手を止めて、顔をあげる。




「あら、菜々ちゃん。今年は行かないの?
今日は天神さまよ」

「‥‥‥ああ!!」

涼ちゃんの結婚騒動ですっかり忘れていたけど
今日は地元のお祭りの日だ。





「そういえば今日だったな」

「菜々子もすっかり忘れてた!!
優花達からメール来てたんだ」

携帯の受信BOXを開いてメールを確認する。



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