蝉時雨
「今年は涼ちゃんもいるし
返事保留にしてたんだった‥‥」
でも今の状況じゃ圭織もついてくるから
涼ちゃんと2人きりで、なんてのは無理。
そうなっちゃうと、
私が完璧アウェーな立場になりかねない。
「‥‥ねぇ、京介くん」
「無理」
箱を下ろし終えた京介に声をかけると、
即座に返事が返ってきた。
「ええっ?!
まだ何も言ってないでしょ!!」
「お前頭の中透けてんだよ。
俺先約あるから無理」
私に視線を移すことなく
携帯をいじりながら京介は答える。
「嘘だ~!!誰と行くのよ」
「まじだって。加藤達とだよ」
「うわっ。出た!!女たらしっ」
加藤さんは隣のクラスの女の子だ。
京介狙いって噂は有名だし、
本人を見ててもそれは一目瞭然。
私が京介に絡むことが気にくわない様で、
勝手にライバル視されてしまっている。
「あ?しょーがねーだろ。
夏休みの課題がかかってんだよ」
「えー、ずるい!!
いいもーん、京介の写すから」
「誰が貸すかよ」
京介と言い合いしてるうちに
玄関から音がして、涼ちゃん達が帰ってきた。