愛し方を知らない少女の歪んだ愛
信じられない。
お兄ちゃんに彼女がいるなんて、聞いたこともなかった。
お兄ちゃんもそれらしい素振りを一度とも見せたことはなかった。

家にはわたしより早く帰ってきているし、夜には勉強をしていたし。

「……嘘だよね。だって、聞いたことないもん」

否定したい。否定しなくちゃ。

「デートとか行ったことねえもん。このこと喋ったの美沙だけだし」
「で、でも……」

否定しなくちゃ、今にも泣き崩れてしまいそう。
悲しさに押し潰されて、小さくなってしまいそう。

「なに? そいつは物好きだって言いたい?」

羨ましい。
わたしもその人になりたい。
そうすればこんな苦しい思いをしなくて済んだのに。

だけど。

「違うよ。ちょっと驚いただけ!」

お兄ちゃんは、そんなわたしを望んではいない。

わたしにだけ教えてくれたんだよ。
秘密をわたし教えてくれたんだよ。

だからわたしは教えてくれたお礼に、笑わなくちゃ。
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