愛し方を知らない少女の歪んだ愛
「……美沙? もう授業終わったよ?」

そんな声で、現実に呼び戻された。
わたしは霞んだ視界の中にいる有希を見つけ、声をかけた。

「あれ、わたし寝てた?」
「ううん。ぼーっとした。ねえ、大丈夫なの?」
「ああ、うん、別に」

有希は鞄に教科書などを詰めているところだった。

もう放課後なのか。
時間が過ぎるのが早い。

「ねえ、なにかあったんなら相談してよね」

有希が心配そうな顔で顔を覗き込んでくる。
わたしは精一杯の笑顔で、大丈夫と答えた。


長い長い帰り道。
いつもはお兄ちゃんと会えるという期待で溢れているのに、今日は違う。

「やだな……お兄ちゃんに会ったら、どんな顔しよう」

溜め息ばかりが漏れてしまう。
きっとお兄ちゃんの顔を直視なんて、できない。

そんなことを思っているうちに、家についている。
わたしは重い家のノブに手をかけた。
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