愛し方を知らない少女の歪んだ愛
ぎぃと古めかしい音がして、玄関の扉が開いた。
いつもなら「ただいま」と叫びながら靴を脱ぎ散らかし、お兄ちゃんのところに行く。
だけど今日はそんな根気なかった。

わたしは玄関に腰をかけ、靴を脱ぐ。
そのとき、見知らぬ靴があるのに気が付いた。

見るからに女物だ。
そして、わたしの学校指定の通学用靴。

わたしの脳裏に、一つの単語が浮かんだ。

「まさか、これ……」

お兄ちゃんの彼女のもの?

そうだ。
それしか有り得ない。
どうでもいい女を家に連れ込むほどお兄ちゃんは軽くない。
絶対に彼女だ!

わたしは立ち上がると、恐る恐るリビングへの廊下を歩いた。

どんな人だろう。
綺麗な人かな。優しそうな人かな。
わたしより可愛かったら、なんか嫌だな。

不安と好奇心が混ざり、わたしの中で暴れる。

わたしは一歩一歩を踏み締めるように、廊下を歩く。
足が進むために、胸の鼓動がひどくなった。
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