愛し方を知らない少女の歪んだ愛
「わたし有希の友達だからはっきり言うね」

わたしは両手に腰を当てて、息を思い切り吸い込んだ。

次にわたしが言う言葉は、相当きついだろう。
わたしだって言われたら泣いてしまう。

「彼氏の感情の変化くらい見てあげてよ。今の有希は、彼女なんて言えない」

ぐさり。
そんな音がした。
有希の心臓に、わたしの言葉が突き刺さる音。

「それにお兄ちゃんが可哀想。だってね、わたしが有希の話をするたびに震えてしまうの。それくらいに今は嫌いなんだよ、有希のこと」

この言葉には、自分を疑った。
本当はあと少しくらいで歯止めするつもりだったのだが、言葉はわたしの意思と関係なく
口から飛び出る。
ひどい言葉が、次々と。

「だから、別れてあげて」

沈黙が続く。
気付けばクラスメートの視線はわたしたちに釘付けだった。

わたしは無言で床を見つめている有に、促すように「ね?」と問いかけた。
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