愛し方を知らない少女の歪んだ愛
わたしはなんの感情も表れないお兄ちゃんの顔を見つめ、震えていた。
無責任なことをしてしまったと、やっと気付いたのだ。
こんな無気力なお兄ちゃん、初めて見た。
こんなにしたのはわたしなんだって突きつけられているような気がして、こっちまで悲しくなってきてしまう。
そんなとき、わたしの視界に床に落ちたお兄ちゃんの携帯電話が入った。
わたしは本能的にその携帯を手にし、中を見た。
抵抗なんてなかった。
ただ、お兄ちゃんをこの状況から救いたかった。
救えるというのならば、なんでもできる。
携帯を開くと、一通のメールが開いてあった。
絵文字も何も使っていない飾り気のない一行の文章は、すぐに有希のものだと分かった。
そしてゆっくりと、文字の羅列を読み上げた。
「……わたしはやっぱり重荷なのね。ごめんなさい。有希」
このメールの内容は、わたしの言葉の影響が大いに出ていた。
またしても罪悪感がわたしを襲う。
疑いが確信になってしまったのだ。
わたしはお兄ちゃんの方を振り向いた。
「……あ」
お兄ちゃんはソファーの上で泣いていた。
両手で髪を鷲掴み、声もあげずに涙を流していた。
わたしが初めて見た、お兄ちゃんの涙だった。