愛し方を知らない少女の歪んだ愛
そんな感情を隠すかのように、わたしは笑顔を作った。

「ね? 簡単なことだよ。お兄ちゃ……」

だけどわたしの笑顔をかき消すように、お兄ちゃんが叫んだ。

「どこが簡単だ!」

その叫びには力も何も入っていなかったけれど、確かにわたしに対する怒りが感じられた。
わたしは手に持っていたティッシュを力なく床に落とし、その場にへたりを座り込んだ。
全身の力が抜けていくようだった。

「終わることは簡単だ……だけどまた、元通りにするのは……」

まるで人生が終わってしまったかのようにお兄ちゃんが泣き出した。
発狂したような、狂わしい叫び声と共に。

わたしは悲しかった。
辛くて、苦しかった。

お兄ちゃんを想って泣くよりも、もっと悲しかった。

「……ごめんなさい」

そして気付いた。
わたしにできることは何もないと。

まるで原型の知らないパズルを崩してしまったよう。
一生懸命にお兄ちゃんが作ったパズルを、わたしがぱしりと手で払い除けて、砕け散る。
改めて自分がした行為に罪悪感を感じ、パズルを元通りにしようとするが、原型を知らないのだから、元通りにするなんて不可能に近い。
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