愛し方を知らない少女の歪んだ愛
わたしはいても立ってもいられなくなり、床に頭をつけた。
俗に言う土下座というやつだ。
わたしが罪を償い方法なんてないけれど、謝るだけは謝りたい。

「……ごめんなさい」

わたしは二度目のごめんなさいを呟いた。
そして、三度目を口に出す。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

いつのまにかお兄ちゃんの叫び声が消えていた。
リビングに聞こえるのはわたしの謝る声のみ。

「……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

いくら謝っても状況が変わらないのは知っている。
だけどしないと気がおさまらない。

途中で咽たり、言葉に詰まったりした。
涙が出たりして、声が多少掠れた。

だけど謝り続けた。

お兄ちゃんはそんなわたしを無表情のまま、ずっと見ていた。

「ごめんなさい。もうこんなことは、しないから……泣かないで」

その言葉を最後に、お兄ちゃんがソファから立ち上がった。
腫れぼったい目でお兄ちゃんを見ると、お兄ちゃんは哀愁を帯びた笑顔で、呟いた。

「それで許すよ。だから、今日は独りにさせて」

その背中を追いかけたかった。
そして「大丈夫だよ」と励ましてあげたかった。

だけどわたしは、動けなかった。
まるで呪いにかけられたかのように。
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