愛し方を知らない少女の歪んだ愛
「いつになってもいい。絶対に、絶対に結婚しような」

有希が声を図太くして、そう言った。
わたしは展開についていけず、有希の言った言葉を繰り返した。

「絶対に……結婚?!」

そして物事の重大さに気付き、いつのまにか叫んでいた。
有希は唇の前に人差し指を立て、しーっというポーズをしている。
わたしは有希につづいて、口を両手で塞ぐというオーバーリアクションを取る。

そんな行為に、有希が声をあげて笑った。
わたしもつられて笑う。

久しぶりの笑いに、わたしは懐かしさを覚えた。
また元のように笑えるのか、そう思うとはち切れんばかりのなにかを感じた。
くすぐったいような、照れ臭いような。

「……そういえば、美沙はいいの?」

するとそんな感情に浸っているわたしを現実に連れ戻すかのように、有希が冷静な声を出した。
その質問の意味が分からなく、わたしは首を傾げた。

「ほら。わたしが祐斗と結婚するってこと」

有希が言い難そうにそう呟く。

そこでやっと質問の意図が理解できた。

「ああ……知ってたんだ。有希は」

わたしは背もたれに体を任せた。
筆箱からシャープペンを一つ出し、手の甲でくるくると回す。

少し空気が重くなったのを感じ、わたしは息苦しくなった。
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