愛し方を知らない少女の歪んだ愛
「嫌でも気付いちゃうよ。あんなに一生懸命にわたしと祐斗を離そうとして」

有希が懐かしそうにくすりと笑った。
だけどわたしは有希とは反対に、ものすごい恥ずかしさと罪悪感に襲われた。

「……ごめん」

わたしはきまり悪く謝った。
そんなわたしに、有希が笑い飛ばす。

「気にしないで。別にいいんだって。だけどね、ちょっと聞いてほしいことがあるの。時間いいかな?」

気にしないでと言うが、有希の顔は明らかに曇っていた。

わたしは有希にこくりと頷くと、有希に言われるままに庭に移った。
この様子から、授業はさぼるのであろう。
少し抵抗を感じたが、一時間くらいいいじゃん、高校生なんだし! を理由に笑い飛ばすことにした。

「あのね、わたしに対する結婚ってものはね、助けてもらうという行為でもあるの」

ふう、と溜め息をつきながら有希が言った。
わたしはこれは長い話になりそうだと感じ、意外と新しいベンチに腰を下ろした。
ゆっくりとその隣に有希が座ってくる。

「助ける? 結婚で?」
「うん。これすごい言い難いんだけど、わたしの両親死んでるんだぁ」

いきなり有希の声のトーンが上がった。
無理にテンションをあげているようだった。

わたしはいきなり突きつけられた事実に、言葉を失った。

「中学一年のころ、事故でね。わたし残されちゃって……生きる希望を失った。だけど、それを祐斗が助けてくれたの。見知らぬわたしを、毎日励ましてくれて」
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