愛し方を知らない少女の歪んだ愛
段々と有希の口調が柔らかくなってきた。
懐かしそうに、嬉しそうに、少し照れながら、有希が話していく。
わたしにとってお兄ちゃんと有希の恋の話を聞くのは容易ではなかった。
だけどわたしはこの瞬間だけお兄ちゃんが赤の他人だと思い込もうと思った。
「それから暫くして、おじいちゃんがわたしを引き取ってくれたの。まだ十三歳だったし、一人っ子だったし、一人暮らしはできなかったの。だけどね、おじいちゃんも死んじゃった。年だったのよ。仕方のないことだったの」
また有希の表情が暗くなった。
焦点が定まらない目で地面を見つめている。
だけど、と有希が続ける。
「わたしのこと疫病神だって、言われちゃって。三人も殺したって、言われちゃって……」
有希が悔しそうに唇を噛んだ。
それはひどい扱われようだと、わたしは心から有希を同情した。
わたしには両親がいて、お兄ちゃんがいて、優しくされている。
全く気付きはしなかったけど、わたしが不満に思っていた生活は、幸せで満ち足りた生活だったのだ。
いつも変わらない笑みでわたしを見てくれている有希に、こんな逸話があったなんて。
「しばらく施設に預かってもらった。今は事情があって、親戚のおばさんの家に居座っているんだけどね。
そう……そんなわたしの逸話を聞いてね、祐斗が言ってくれたの。おれが幸せにしてやるから、おれのところへ来いって。あのときは本気だと思わなかったけど、嬉しかったなぁ」
改めてお兄ちゃんはすごいと思った。
有希もそんな逸話を隠すように、強く逞しく生きていてすごいが。
「それから。毎日公園で会ってた友達のような関係なんだけど、二人で街に出掛けたりしはじめた。それで本格的に付き合い始めたのは、去年。祐斗と同じ学校に受験して、やっとの思いで受かった。そしてわたしが高校生になって、やがて結婚の話になった」
懐かしそうに、嬉しそうに、少し照れながら、有希が話していく。
わたしにとってお兄ちゃんと有希の恋の話を聞くのは容易ではなかった。
だけどわたしはこの瞬間だけお兄ちゃんが赤の他人だと思い込もうと思った。
「それから暫くして、おじいちゃんがわたしを引き取ってくれたの。まだ十三歳だったし、一人っ子だったし、一人暮らしはできなかったの。だけどね、おじいちゃんも死んじゃった。年だったのよ。仕方のないことだったの」
また有希の表情が暗くなった。
焦点が定まらない目で地面を見つめている。
だけど、と有希が続ける。
「わたしのこと疫病神だって、言われちゃって。三人も殺したって、言われちゃって……」
有希が悔しそうに唇を噛んだ。
それはひどい扱われようだと、わたしは心から有希を同情した。
わたしには両親がいて、お兄ちゃんがいて、優しくされている。
全く気付きはしなかったけど、わたしが不満に思っていた生活は、幸せで満ち足りた生活だったのだ。
いつも変わらない笑みでわたしを見てくれている有希に、こんな逸話があったなんて。
「しばらく施設に預かってもらった。今は事情があって、親戚のおばさんの家に居座っているんだけどね。
そう……そんなわたしの逸話を聞いてね、祐斗が言ってくれたの。おれが幸せにしてやるから、おれのところへ来いって。あのときは本気だと思わなかったけど、嬉しかったなぁ」
改めてお兄ちゃんはすごいと思った。
有希もそんな逸話を隠すように、強く逞しく生きていてすごいが。
「それから。毎日公園で会ってた友達のような関係なんだけど、二人で街に出掛けたりしはじめた。それで本格的に付き合い始めたのは、去年。祐斗と同じ学校に受験して、やっとの思いで受かった。そしてわたしが高校生になって、やがて結婚の話になった」