愛し方を知らない少女の歪んだ愛
兄【清水祐太】
「ただいま!」
わたしは家に入るなり、リビングにいるお兄ちゃんに駆け寄った。
お兄ちゃんはソファの上で雑誌を片手に寛いでいた。
そしてわたしを見るなり、優しい笑みを浮かべる。
「ああ、おかえり。どうだった? 友達出来たか?」
「もちろん! そうそう、隣の子がね……」
わたしはこの時間帯が一番好きだった。
お兄ちゃんと話せる時間。
お母さんはお仕事でいないから、ちょっとばかり変な言動を取ったって大丈夫だ。たぶん。
だけど今日のお兄ちゃんと話す時間は、すぐに終わってしまった。
机の上に置いてあったお兄ちゃんの携帯が、鳴ったのだ。
「あっ、美沙、悪い」
お兄ちゃんはそう言うと雑誌を置いて、立ち上がってしまう。
わたしは不満そうな顔で睨んでみるが、お兄ちゃんがこちらを向く様子はなかった。