炭坑の子供たち(1)
 こちらはもうヤケクソで

「ええい、もうへっちん火事や」

と、ブツブツ文句を言いながら

力まかせに、じいさんの背中をへちまでこすると

痛がるどころか、嬉しそうな顔をするので

こちらも何となく嬉しくなり

頭を洗ってやったり、肩を揉んでやったりする。

いくら、日頃、熱い、ぬるいといがみ合っていても

みんな心の隅では、老人を尊敬していた。

その証拠に、

混雑したバスや列車に、じいさんやばあさんが何人も乗ってくると

どんな不良のグループでも、サッと立ち上がって席を譲ったものだ。
< 15 / 98 >

この作品をシェア

pagetop