炭坑の子供たち(1)
 ところが、ベテラン刑事なんかがやって来ると

とたんに立場は逆転する。

湯気に体を隠す様に、隅っこの方で小さくなっている。

「おっ、お前おったとか、あんまりおとなしいけん、気が付かんやったぞ」

「ああ、こんちわ」

「お前らは、社会のクズや、ちゃんと真面目に仕事をしろ、仕事を、いつでも紹介してやるぞ」

「クズクズと言いなんな、わしらも、ちょっとは社会の役に立っちょるんばい」

「何の役にや?」

「仕事をしても、賃金を貰えんやった者の代わりに、取り立ててやったり、大事な娘に付いた悪い虫を、追っ払ってやったり、色々人の為になっちょるんばい」

「金を貰ろうてやろうが、ほんとに人の為と思うなら、只でやってやれ、そしたら認めてやるたい」

「そしたら、生活が出来んばい」

そして、刑事が帰ると、こうつぶやいた。

「桜の代紋には勝てんばい」

桜の代紋とは、警察の紋章である。
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