炭坑の子供たち(1)
どっかと座った牛の目の前に、打球が転がって行くと、大変である。

馬は後ろ足で蹴られるから、後方から近付くな

牛は角があるから、前方から近付くな

と、昔から言われているが

目の前に落ちたボールを取りに行くには

正面から近付くか、牛を動かして、ボールから遠ざけるしかないが

正面から行くのは、余りに恐ろしいので、牛を動かす事に決定する。

「みんな、草を引き抜いて、こっつけるばい(投げつける)」

そこで、その辺の、比較的大きな草を引き抜いて

根にたっぷり泥のついたやつを、牛に向かって投げつける。

はじめの内は、胴体に当てて、動かそうとするが

ビクとも動こうとしないので

もうそうなったら、顔と言わず、頭と言わず、泥の付いた草を投げつける。



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