炭坑の子供たち(1)

キャッチボール好き

 野球少年は、中学生になっても、野球が好きである。

夕方になると、ある炭住街の通りでは

キャッチボールをする中学生が、やたらと多くなる。

と言っても、気のないキャッチボールをしているだけで

とある社宅の方ばかりを気にしている。

その社宅には、全男子生徒の憧れの的である、炭住街一の可愛い女子が住んでいて

野球少年の目的はその子であった。

やがて、その子が、手に洗面器を持って、お母さんと共に風呂に向かうと

キャッチボールをしていた野球少年達が

一斉に姿を消し、とある場所にと移動する。

それは、共同浴場の裏にある空き地で

板塀の破れた部分から中へと、ゾロゾロと中学生達が入って行く。
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