炭坑の子供たち(1)
不思議だったのは

同じ四軒長屋で、同じ様な人間が暮らしているのに

友達の家なんかに遊びに行くと、その家独特の匂いがあった点で

自分の家では全く感じないのに、友達もうちに来れば

自分のうちとは違った匂いを、感じていたのだろう。

元々社宅には、鍵をかける習慣などなかった。

夜寝る時ですら、鍵なんてかけない。

たまに居る用心深い家でも、中から戸に突っかい棒をする程度である。

そんなある日の夜中

社宅の一軒に泥棒が入り、タオル2枚が盗まれてしまった。

それ以来、防犯意識が高まり

どの家も、外出の時には、表の戸に南京錠をかけるようになったが、

それでは、留守なのがバレバレなので、今度は戸に穴を開け

内側で鍵がかかるのが流行り出した。

でも、それも何の意味もなかった。

どの家もが、家の入り口にある牛乳箱に、鍵を入れていたからである。


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