炭坑の子供たち(1)
鍵を買うのが勿体ないと思った家は
ちょっと泊りがけで、親戚の家なんかに行く時には
玄関の戸や裏の雨戸、窓なんかを釘づけし
更には、隣り近所に声をかけて、出かけたものである。
そんな家の、寝る時に、家の中からかける鍵は
玄関の戸の上部とさんに穴を開けて、5寸釘を差込み、窓も同じ様にしていた。
そして、何処にも行かない様に、その5寸釘にはひもが付けられていた。
炭住街には、髪にぬる椿油を売るばあさんや
刑務所を出所したばかりの押し売りなど
様々な物売りがやって来たが
中でもやっかいなのが、托鉢の坊さんや巡礼で
特に苦手だったのが、母子の巡礼であり
表に立つ幼い女の子を連れた巡礼には、なかなか「御免」とは言えなかった。
すると、奥からおやじが大声で言った。
「御免っ」
その一言で、母子の巡礼は、しょんぼりと去って行った。
ちょっと泊りがけで、親戚の家なんかに行く時には
玄関の戸や裏の雨戸、窓なんかを釘づけし
更には、隣り近所に声をかけて、出かけたものである。
そんな家の、寝る時に、家の中からかける鍵は
玄関の戸の上部とさんに穴を開けて、5寸釘を差込み、窓も同じ様にしていた。
そして、何処にも行かない様に、その5寸釘にはひもが付けられていた。
炭住街には、髪にぬる椿油を売るばあさんや
刑務所を出所したばかりの押し売りなど
様々な物売りがやって来たが
中でもやっかいなのが、托鉢の坊さんや巡礼で
特に苦手だったのが、母子の巡礼であり
表に立つ幼い女の子を連れた巡礼には、なかなか「御免」とは言えなかった。
すると、奥からおやじが大声で言った。
「御免っ」
その一言で、母子の巡礼は、しょんぼりと去って行った。