炭坑の子供たち(1)
 大体、紙芝居は、ヒーローが危機にひんした、一番いい所で終わる。

そこで、早く続きのストーリーを知りたくて

おっさんが自転車で帰るのを、5人がマラソンで追いかけた。

自宅は、英彦山川の直ぐそばにあり、おっさんが自転車を降りるなり

「おいちゃん、コケカキーキーの続きを見せちゃんない」

と、せがむと

「ちゃあらん、ちゃあらん、見せらるるか」

と、言っていたが、余りのしつこさに

「もうしゃしいき、見せちゃんないよ、見せちゃらんとこの子ら帰らんばい」

と、奥さんが言ってくれたので

とうとうおっさんも、半ばヤケクソになって

「ほらっ、勝手に見ろっ」

と、みんなの目の前に、ドサッと紙芝居の束を置いて行き

5人が、むさぶる様に見たのは当然だが

面白い事も何ともなかった。

やっぱり、おっさんの語りがあってこその、紙芝居である。



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