炭坑の子供たち(1)
 どの家庭も、家族が多いので

がめ煮なんかは、大きな鍋でこしらえていた。

中に入れるゴボウは、ゴンボと呼び

薬味の唐辛子、鷹の爪は、トンガラシと言った。

野菜を煮たりゆでたりする時には、ちゃんと決まりがあって

ゴボウや大根の様に、土の中に出来る、いわゆる根菜は、水から

ほうれん草みたいな葉物は、沸騰してから入れるらしい。

母親達は、料理の途中で、醤油が足りなくなると

「隣りから、醤油を借りて来て」

と、言い

子供達が、隣りの家に走った。

「おごめん、醤油を貸して」

「そこにあるけん、瓶ごと持って行き」

当時は、隣りに、味噌、醤油、米なんかを借りに行くのは、日常茶飯事であった。

やがて、大きな鍋の取っ手を持ち

起用に上下に揺すって、中の具を入れ替える姿は、たくましかった。
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