炭坑の子供たち(1)
テレビの洋画なんかで、ナイフとフォークを使って食べる、ブ厚い牛肉の事を

みんなは、「ビステキ」と呼んでいた。

未だ一度も口にした事がなく、憧れの食べ物である。

おやじは、夕食時には、だるま焼酎を飲んでいて

余りにもうまそうに飲むので、じっと見ていると

母親が炊事場に立ったスキに

「お前も一杯やるか」

と、コップを差し出し

一口飲んで、むせていると

母親が気付いて

「あんた、今頃からのん兵衛にして、どぎゃんするね」

と、よく叱られていた。

こんなモノの、どこがおいしいのか、全く分からず

そのおいしさが分かるのは、ずっと先の事であった。

そんなおやじでも、料理に使う包丁を、砥石でといでいたが

その砥石は、相当年期が入っていて、もう中程が、大きくへこんでいるし

包丁にしても、幅も厚さも薄くなっていて

使える物は、トコトン使うのである。



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