Reminiscence
「そんな……ことまで」
「ほら、やはりそんな顔をする」
うんざりしたように旅人はフェンをにらんだ。
「私はなにかを喪失しただけで、これから手にいれるであろうものまで奪われたわけじゃない。現に私は自由を手にいれた。お前と旅をできるようになった。私はもう寝るぞ、疲れた。お前も早く寝ろ」
旅人はフェンに背中を向けるように横になると、すぐに寝息をたてはじめた。
フェンは旅人の言葉を聞いてしばらくぽかんとしていたが、すぐに嬉しそうに微笑み、ランジェをさらに強く抱きしめた。
フェンの腕の中でランジェは力なく揺れていた。
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