Reminiscence
ランジェの手を借りて、フェンは穴から這い上がった。
穴の中を覗き込むと、眠っているように目を閉じたままの旅人を見た。
こうして、顔を見れば、ただ眠っているようにしか見えない。
師匠は死んでなんかいなくて、ただ寝たふりをしていて……今にも起きだして、だまされたって笑うんだ。
師匠は演技がすごく上手だから、私は全然気が付かなくて、でも、赦してあげるの。
だって……。
「フェン」
名前を呼ばれて、フェンははっと振り返った。
相変わらずの無表情でランジェがフェンを見ていた。
「その人間は死んだ。マナをすべてお前に譲渡して、死んだんだ。わかるだろう」
< 233 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop