Reminiscence
「ランジェ……私、師匠を侮辱されたのが許せなくて……師匠の剣をあんなにも無残に破壊したのが赦せなくて、だまされたこと、私の愚かさ、そういうの……全部、全部赦せなくて……っ」
フェンは涙を流したままヒスイを見下ろした。
「殺して、しまったのね。私、人を殺したのね。なのに、自分を赦してしまう。彼を悲しむことなんてできなくて……」
フェンはそう言うと、ふっと気を失った。
ランジェは何も言えず、唇を噛んだ。
このような不幸は、外に出た精霊の契約者には必ず訪れる。
それはいったいなんの対価なのか。
それでもこれにはランジェも神を恨む気持ちでいっぱいになった。
愛した人の死と、裏切り、そして殺人。
それがいっぺんに、突然訪れたフェンの精神は、狂わず、保っていられるのだろうか。
それだけの対価を払わなければならないほど、フェンの定めは大きく、強固なものなのか。
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