Reminiscence
シエン、と名乗るどこかで見た覚えのある猫がミカゲの自室に来たのは1時間ほど前だった。
シエンとは古代語で精霊を意味する言葉だ。
魔力のみじんも感じられない猫が人の言葉を操り、さらにはシエンを名乗る。
ミカゲはさっと緊張した。
シエンは約束を果たしにきた、と言った。
そして、ことのあらましを語った。
クエロが死んだこと、南の街での悲惨な出来事、そして今のフェンの状態。
シエンはもしフェンの目が覚めても自由に動けないように体を幼い時に戻した、と言った。
人は体のバランスが突然崩れると動けなくなるものである。
ミカゲの専攻ではないが、変身術を覚えたての人間が震えるようにしか動けなくなるところは何度も見たことがあった。
たしかに、突然身長やバランスが変わってしまったらしばらくまともに動けなくなるだろう。
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