Reminiscence
「ダンテ……」
いつの間にか当然のようにそこにある記憶にどこか懐かしさを感じながらミカゲは呟いた。
「ミカゲさん。思い出しましたか?」
「フェン」
ミカゲは閉じていた目を開けた。
そこは自分の家のリビングだった。
どうやら自分はテーブルに突っ伏していたようだった。
紅茶のカップはまだ湯気が出ているから、そんなに時間は経っていないらしい。
「ええ、全部。それと、あなたとダンテの旅の記憶も」
すると、フェンは嬉しそうに微笑んだ。
「師匠のことを、それに私のことを覚えてくれている人がいるってなんだかうれしいです」
「……そうね」
ミカゲは目を見開いた。
それは、簡単なことだけれど、とても大事なことだった。
覚えていることと、覚えてもらっていること、それはとてもうれしいことなのだ。
だから。
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