Reminiscence

すぅっと息を吸い、フェンは高らかに歌いだした。
声は嘘のようにあたり響き、道行く人はこの声を聞くと思わず足を止めて声の主を探した。
精霊の森にいるランジェは木にもたれかかりふっと微笑んだ。
声は嘘のようによく響き、人をひきつける。
生まれついての歌い手を舞台にあげるのに何かおかしいことはあるのだろうか。
フェンの声はフェンの弾く楽器を経由しランジェのいる精霊の森にまで届いていた。
その歌を聴くために少女を生かしたのだと今さらながらに思い出す。
「クロウ」
自らを呼ぶ声にランジェは片目を開けて声の主を見た。
女性の精霊がランジェの前でひざまついていた。
「なんだ？」