Reminiscence
フェンは久々に中身のいっぱい詰まった袋を目の高さまで持ち上げた。
見知らぬ少年がこの袋をくれてから2年経つが未だに褪せた様子はない。
本当に高級な袋だったのだとフェンはつくづく関心した。
フェンはいつも物語りや伝承などを語ったあとに歌を歌う。
吟遊詩人の歌うような詩ではなく、かつて精霊の森で歌ったような歌だ。
その歌だけは、目の前の人々に向けたものではなく、ランジェのために歌っているつもりだった。
フェンは楽器を抱え、ミカゲの家に帰ろうとしたとき、後ろから誰かがぶつかってきた。
「わっ」
フェンはなんとか姿勢を保ったが、手に持っていた袋がなくなっていた。
どうして、ととっさに足元を見るが落ちていない。
そのとき、高らかに声が上がった。
「盗った!」
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