Reminiscence
「あなたも図書室に用があるの?」
フェンが図書室の扉に手をかけたとき、後ろから話しかけられた。
振り返ると、そこには黒髪を長く伸ばした少女が本を抱えて立っていた。
少し赤っぽい橙色の瞳が嬉しそうに細められた。
「うれしい。私の周りには、誰も本を読む人がいないんだもの。ねえ、あなたはどんな本が好き?」
「え……あ?」
突然親しげに話しかけられてフェンは狼狽した。
しかし、すぐに冷静になって少女の質問に答えた。
「ぼくは政治経済の本しか読んだことがないから……ここには建国記を読みにきたんだけど」
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