Reminiscence
「そうなの……でもいろいろ読んでみるといいわ。でもまずは建国記ね。ここは広いから探すのに手間取るわ。案内してあげる」
少女は図書室の扉を開けた。
図書室は少し古い紙の匂いがした。
それは停滞した時と静寂の匂いだった。
少女とフェンは並んで歩いた。
「私のことはポーって呼んで。あなたの名前は?」
フェンはポーがウィザードだと気付いた。
ポーはそう呼んで、とは言ったが、名乗ったわけではない。
ウィザードは自分の名を簡単に明かすことを良しとしない。
「フェン」
フェンが短く答えると、ポーは少し驚いた風だった。
フェンが思ったことをポーも思ったのかもしれない。
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