Reminiscence
それきりアズは口を閉ざした。
アズは全てを語ったわけではなかったが、ノインはその答えに満足したようだった。
「では次はお嬢さんの番だな。本当の声を聴かせてくれないか」
フェンは指先をのど元に持っていった。
指先が光る。フェンはとっくに慣れていたのどの違和感がなくなっていくのを感じた。
ノインやアズに知られることは、もう構わないと思っていた。
ノインの判断は正しかった。
アズはおそらく、私にとって重要な人物だ。
そして、アズにとっても。
皮袋を盗まれたときから、私達の運命は重なった。
片や土地神の魔力を受け継いだ者。
片や世界創造の女神に仕える精霊の魔力を持つもの。
世界の異変にどうしてお互いを知らないでいられる?
「まだ、1週間も経ってないのに、この声を聴くのはひどく久しぶりな気がする」
フェンは眼帯を外した。
ざわり、とあたりのマナが騒ぎ始めた。
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