Reminiscence
フェンはとっさのことに頭がついて行かず、ただ男を凝視していた。
なぜか男の動きは遅々としていて、その剣が自分に向かって振り下ろされていくのを他人事のように見つめていた。
あ、死ぬ?
そうフェンが気が付いたときにはもうすでに剣先がすぐそこまで迫っていた。
『今宵は魔性月ぞ』
その声が聞こえたと思った瞬間、フェンは何か柔らかくて暖かいものの上にいた。
それは目にもとまらぬ速さで剣先を潜り抜けると、旅人や野盗の横をすり抜け、あっという間に脱出してしまった。
「ランジェ!?」
フェンが乗っていた獣は白銀色の毛並を月光に輝かせていた。
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