つないだ手。
振り返ることもせず
早足で歩く私を見て
タクヤが言った。

「ねぇ…無理すんなよ。

あれが、ヒロくんでしょ?」

と言った。

「なんで………?」

「結菜毎日寝てるとき
泣きながら呼んでる…」

「うそ……」

私は毎日、夢を見ていた。

ヒロくんとの夢。

笑ってるヒロくんに
手を伸ばすけど

届きそうで届かなくて…

そんな夢を
毎日見ていたんだ。


「別れよう?

結菜、俺じゃ無理だ。

結菜を幸せに出来ないよ。

でも、この1ヶ月で
やっと諦めがついたよ。

だからこの1ヶ月は
俺にとって無駄じゃなかった。

ありがとう、結菜。


ほら、行きなっ?」


そう言って私の背中を
押すタクヤは

今まで見た中で
一番の笑顔だった。
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